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夢絵・夢漫画

No.25

イラストとss


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ホワイトデーイラスト最高でした


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ブートヒルは足が長い


↓以下上記イラストとは関係ないssです
ブートヒルの身体の構造について捏造を含みます

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 ストロボは地面を踏みつけるように進んでいた。粘つくような夜の闇が足に纏わりついているように感じるが、この一歩の重さは現実がもたらしている。
 彼女に背負われている青年は、普段と打って変わり鉄の殻で構成されていることについて雄弁だった。陽気な挙動は今や殻の奥に仕舞いこまれ、沈黙している。
 彼の足を引きずってしまっていることに気が付いて、ストロボは背負い直そうと身じろぎした。局所的な重力操作を可能にする装置を常に身に着けてはいるが、相手が精密なサイボーグともなると使用する気にはなれなかった。ちょっとした操作ミスで、彼の内臓とも言える基盤にかけてはならない圧を与えてしまうかもしれない。
 深夜の街でもやはり人の目はある。舗装されている表通りを歩きたい誘惑をこらえて、ストロボは裏路地のぬかるんだ道を青年を伴い改めて歩きはじめた。

 連絡用周波数帯を開いていたのはたまたまだった。
 留まっていた星で遂行すべき案件を片付け、一度関係者に連絡を取ろうと通信を試みていた。だが関係各所のトラブルか第三者の妨害なのか、なかなか繋がらない。たまにあることではある。同じことがあった時範囲を広げどこかと経由すれば解決したことも多々あったので、私的な通信ではなくなってしまうが面倒くささが勝ってしまいストロボは周波数帯を大きく開いた。
 しかしそれでも通信は成功せず嘆息しながら周波数帯を閉じようとした時、ノイズが彼女の耳に滑り込んできた。
 ノイズ自体はストロボの興味を引くものではなかった。彼女が周波数帯をそのまま閉じなかったのは、ノイズの発信源が顔見知りの男のものだとわかったからだ。
 顔見知りのクラシックな男、ブートヒルは主にボイスメッセージを好む。彼とは何度かやり取りしたことがあるが、彼の通信手段は基本音波を中心としている。そのため誤動作の連絡があった際に意味不明な内容が文章で羅列することがある。彼が音波を文章に変換する設定を使用していることが原因だった。だが時々スターピース通信が文章変換をすっ飛ばすこともある。ある日、度重なる爆撃の音が大音量で届けられたストロボはこれを攻撃であると解釈し、抗議を申し立てたが忙しいとあしらわれた。それ以来彼との連絡手段をブロックするか真剣に考えている。
 ノイズの発信源位置はすぐに特定でき、同じ星にいたことにいささか驚きつつもブロックする前に先日の文句を言ってやろうかとストロボは位置を更に絞った。少し遠いが行けないところではない。予約している船が出航するまで暇であるし、ストロボは向かうことにした。
 ストロボが移動している間も発信源位置は変わらず、ブートヒルはそこにいた。
 けれど彼女は結果、文句を言うことができなかった。彼の冷たい体は地面に無造作に横たわり、いくら呼びかけても動かなかった。辺りには硝煙のにおいと、死体がふたつだけ残っていた。

「なぜ今回は駄目なんです?」
 ストロボは極力丁寧に質問した。相手は不快なのを隠そうともせず大いに顔に出している。
 受付カウンター越しにいる貸倉庫の管理者は、彼女が背負う機械の青年をねめつけた。
「厄介事はごめんなんでね」
 佇んでいると背中のブートヒルの重みが増してくるような気がする。交渉している暇はないが、できる限り騒ぎも起こしたくない。
 この星でサイボーグであるブートヒルを担ぎ込める場所をストロボは知らなかった。彼を診れるドクターは知っているが、連絡用周波数帯は移動している間も弄り回したものの未だに使えない。そもそもあまりここが治安の良い星ではないばかりか、極めつけはブートヒルが七億の懸賞金をかけられていることもあり無力な彼を預けられる安全なエンジニアを探すのは至難の業だった。探している間に彼になにかあっては遅い。
 短い逡巡を終えたストロボは彼を自身が診ることを選んだ。機械知識がないわけではないし、一応拠点もある。応急処置ぐらいはできるかもしれない。診る間も連絡用周波数帯は開きっぱなしにしておけば、直って本物のドクターが出てくれる可能性もある。
 だが拠点である貸倉庫に入ろうとしたところでストップがかかった。クラシックな様相をしたサイボーグはなかなかいない。貸倉庫の管理者は、ブートヒルが宇宙のクレジットを牛耳る大企業から嫌われていることを知っているらしい。
「料金は倍払います」
「倍だったとしてもカンパニーの総資産の欠片にもなりゃしないだろう。いいか、俺が通報してないのはあんたが本当に良い客だったからだ。俺の親切心が仕事してる間にさっさと出てってくれ」
「あなたがたには迷惑はかけない。私たちが出て行った後なら通報してくれていい。脅されて騙されたって言って」
「カンパニーの取り調べがどんだけ面倒なのか知ってんのか!?」
 ストロボはイライラと頭を振った。
「お願いです。人命救助のために動いているんです」
「ブリキ人形のか?」
 三拍後、彼女は黙って相手を殴った。
 全体重を乗せた拳を受けると管理者は急に善性が活性化したらしく、眠ることでストロボに道を開けた。ストロボは彼女たちが出ていくまで快適な睡眠を管理者が得られるよう、体に負担がかからない程度に縛り上げ猿轡を噛ませるとカウンターの下に彼を押し込んだ。
 適切な受付を済ませるとストロボは最後の力を振り絞って、自分が寝床にしている貸倉庫の中の簡易ベッドにブートヒルを運んだ。着ていたコートを投げ捨てて、ベルトに挟んでいた彼の帽子のことも思い出し棚の上にそっと置いた。ブートヒルの武装を傷つけないように外していき、健診ができる体勢にする。
 瞼を開けて瞳孔を見てみたが、生身の人間と違う箇所がありよくわからない。知識を総動員して不具合がどこにあるのか順にチェックしていく。
 背負っている時から感じてはいたが、胸に耳を当てると駆動音が聞こえた。生きてはいると一瞬安堵しかけるも、サイボーグの体はどこからが『生きている』に該当するのかと過ぎる。
 血の代わりに流れている溶液が巡っていたとしても、もし神経を制御している機能がダウンして修復不可能な状況に陥っていたのだとしたら、生きていると言えるのだろうか? 
 そもそもブートヒルのシナプスを制御しているのは生身の脳なのだろうか? ストロボは彼が何割機械化しているのか知らない。以前暇つぶしの会話の延長線上で体にトラブルがあった時はどうしているのかと訊いことがあるが、彼の答えがどんなものだったかあまりよく憶えていない。随分前の出来事だったのもあるが、電子工学は難しくもあったし、それにまさか自分がブートヒルを助けることになるとは思わなかった。
 破損した箇所を見つけて処置を施す。道具は倉庫に置いてあったものでやりくりした。自分でもまだわかるものならなんとかなるが、もしシナプスの制御に関するものならお手上げだ。
 汗が噴き出てきて彼にかからないように慌てて拭った。ふと顔の方が目に留まる。発見して一番最初に呼吸を確認したが、彼にはない。根本的にサイボーグは呼吸を必要としていないことを忘れて確認した。酸素は中で満たされている溶液が彼に与えている。
 対面でもボイスメッセージでも何度か聞いたブートヒルの声は、どこか電子的だった。生まれ持った声帯はすでにないのだろう。
 処置を続ける。
 そういえば彼は音楽ができるのだと聞いた。翌日連続爆撃ボイスメッセージが来たのでしばらく連絡を控えていたのだが、頼めば聴かせてくれると言っていたはずだ。
 ストロボができる処置すべてを終えてもブートヒルは眠ったままだった。それが眠りなのか死なのかさえ彼女にはわからない。彼女がこれまで交流してきたブートヒルの人間性は、鉄の殻の中に閉じ込められていた。
 必要ないのはわかっていたが薄手の毛布を彼にかける。放熱の処置はしてあるので害にはならないはずだ。ストロボは投げ捨てたコートの上に寝転がった。
 次起きた時に、ブートヒルの目も覚めていればいい。

崩壊スターレイル:ブートヒル,夢絵